植草歩選手は、高校空手界の古豪として知られている柏日体高等学校（現・日体大柏高等学校）から、香川政夫師範の指導を求めて、特待生という形で帝京大学に進学しました。

帝京大学在学中の2013年には、コロンビアで開催されたワールドゲームズ（組手競技）で金メダルを獲得。

翌2014年に韓国・仁川で開催されたアジア競技大会では3位に終わり、大学を卒業して引退するつもりだったそうです。

しかし、2020年の東京オリンピックに空手道が正式種目になる可能性があったため、現役続行を決意した植草歩選手。

2015年に開催された全日本空手道選手権大会の個人組手で初優勝を飾ると、翌2016年、2017年と3連覇を果たし、空手の組手女子61kg超級の東京オリンピック代表に確定しています。

そんな植草歩選手は、東京オリンピックでのメダル獲得が大いに期待されるとともに、その空手選手らしからぬルックスから、“空手界のきゃりーぱみゅぱみゅ”としても注目を集めていました。

香川政夫氏は、大阪府出身の空手家で、全日本空手道連盟公認八段、日本空手松涛連盟九段。帝京大学空手部師範のかたわら、日本空手松涛連盟の首席師範を務めています。

さらに、世界空手連盟技術委員委員長、全日本空手道連盟ナショナルチームのコーチ、監督、強化委員会委員長などを歴任する、まさに日本空手界の第一人者的存在です。

植草歩選手は、2011年～2015年まで帝京大学空手道部に所属し、同大学を卒業した後も、定期的に帝京大学空手道部の道場に通い、香川政夫師範から指導を受けていました。

ところが2021年3月24日、愛弟子であるはずの植草歩選手に対する、香川政夫師範のパワハラ問題が浮上するんですよね。

さらに3月28日には、植草歩選手が香川政夫師範から受けた具体的なパワハラ行為や告発するに至った経緯をブログで詳細に説明し、マスコミに大きく取り沙汰されることになります。

植草歩選手のブログに書かれた内容を簡単に整理すると…

① 2020年9月頃から、香川政夫師範から練習環境のこと、大学院進学のこと、その他プライベートのことなどで、自立心や自尊心を傷つけられたり、大声で怒鳴られたりすることが多くなった。

② 2020年12月20日頃から、香川政夫師範が突いたり振り回したりする竹刀を敵の攻撃に見立て、選手は防具を着けない状態で、竹刀をかわしながら反撃するという稽古が行われるようになった。

それにより数人の選手が負傷した他、植草歩選手自身も負傷を負ったことから、香川政夫師範に稽古の中止を求めたが、「恐怖心があるから強くなれない」などと聞き入れられなかった。

③ 2021年2月の練習中に負った肉離れによりドクターストップがかかり、香川政夫師範に連絡をした上で、帝京大学での練習を欠席し、母校である日体大柏で調整をしていたところ、3月に行われる強化合宿への参加を認めないと言い渡される。

当時、故障は既に完治しており、医師からも練習再開の許可が下りており、合宿に参加させてもらえるよう香川政夫師範に直訴するも、師範からは「帝京大学で練習してないやつが合宿に行けるか」「2週間もろくに練習していないやつが合宿に来たら他の選手の目障りや」と一喝される。

女子日本代表監督にも一連の経緯を説明した上で、合宿に参加させて欲しいとの意向を伝えるも、代表監督からも「師範がおっしゃられているから今回は我慢するように」との返事が返ってくるばかりだった…。

東京オリンピックが近づく中で、精神的に追い詰められた植草歩選手は、「この状況を何とか打開しなければ！」との思いから、日本オリンピック委員会（JOC）の通報窓口に相談した結果、マスコミの知るところとなり今回のパワハラ騒動となったようです。

特に、②の香川政夫師範による竹刀による稽古については、次のような衝撃的な内容だったことから、マスコミはこぞって“竹刀による稽古”の危険性を訴えるとともに、植草歩選手には大きな同情が寄せられていたようです。