このリオデジャネイロ五輪がオリンピック初出場だった川井梨紗子さんは、選手村のエレベーターの中で一緒だった大先輩の伊調馨さんに、「五輪は何か違うんですか？」との質問を投げかけたのだとか。

その時に返ってきた答えがこちら。

その後、川井梨紗子さんはこの言葉を胸にリオデジャネイロ五輪を戦い抜き、オリンピック初出場にして63kg級の金メダルを獲得したのでした。

そして、2021年に開催された東京2020オリンピックで、川井梨紗子さんが妹の川井友香子さんにあるアドバイスを贈り、見事金メダルを獲得するのですが…そのアドバイスというのが、リオ五輪の際に伊調馨さんから貰ったこの言葉だったそうです。

このように川井梨紗子さんにとって伊調馨さんは、憧れの存在であり、尊敬すべき大先輩だったわけですが、それと同時に…「いつか超えなければならない存在」でもありました。

と言うのも、川井梨紗子さんが初出場したリオ五輪では、伊調馨との対決を避ける形で、階級を本来の58kg級から63kgへと変えて出場していたからなんですよね。

次に、そんな川井梨紗子さんと伊調馨さんの日本レスリング史に残るとも言われている、熾烈なライバル関係についてついてみていくことにしましょう。

グレコローマンレスリングの元学生チャンピオンだった父親と、1989年に開催された世界選手権53kg級に出場して第7位に入った母親という、レスリング一家に生まれた川井梨紗子さん。

そんな川井梨紗子さんがレスリングを始めたのは、小学2年生の時で、母親がコーチをつとめる金沢ジュニアレスリングクラブに入門したことがキッカケでした。

その後、着実に実力を身に付けていった川井梨紗子さんは、2013年に世界ジュニア選手権に出場し、55kg級で優勝を飾るのですが…

この階級にはオリンピック3連覇中だった“霊長類最強女子”と恐れられた吉田沙保里さんが君臨していたんですよね。

やはりその壁はとてつもなく高く、川井梨紗子さんは2014年からは吉田沙保里さんを避けるように、階級を58kg級に変更するのですが…

今度はその階級に、アテネ、北京、ロンドンの63kg級でオリンピック3連覇を果たしていた伊調馨さんが、階級を下げてきたのです。

そんな伊調馨さんとの代表争いを避けるべく、栄和人監督から階級変更を言い渡された川井梨紗子さんは、悩み抜いた末に63kg級への階級変更を決断。

そして、それが奏効し、前述したように川井梨紗子さんは、見事リオ五輪を制したわけです。ただ、川井梨紗子さん自身の中では、金メダルを獲得した喜びの中にも、どこか納得できない思いがあったようですね。

そんな自分の中にくすぶっていたモヤモヤを晴らすべく、川井梨紗子さんはリオデジャネイロ五輪後、本来の自分の体格にマッチした57kg級に戻しました。

一方の伊調馨さんは、リオデジャネイロ五輪の後、栄和人監督との間にパワハラ騒動が勃発し、一時期は競技から離れざるをえなくなるという、現役選手には致命的な問題を抱えていました。